メタ・ヘルスプラクティショナー/マスタープラクティショナーのための倫理規定

メタ・へルスプラクティショナー=M-P、マスタープラクティショナー=M-MP

1. 序論

この文書は、メタ・ヘルスに従事するプラクティショナー/マスタープラクティショナー(以下M-P/M-MP)に対し、最低限の倫理規定および行動規範例を明示したものである。

この倫理規定および行動規範で述べられている最低限の基準は、M-P/M-MPの取るべき適切な振る舞いを規定し、一般の人々がメタ・ヘルスのセッションを受ける時に保護されることを意図したものである。

全てのM-P/M-MPは適切な振る舞いをして自分の行動に責任を持ち、メタ・ヘルスに対する人々からの信頼を守ることが求められる。

2. M-P/M-MPがクライアントを扱う上での倫理規定および行動規範

2-1 一般的事項

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • 他者に対して敬意を払い、礼儀正しく接しなくてはならない。
  • クライアントとの人間関係について責任を持ち、両者の間にある信頼を守らねばならない。
  • クライアントから求められた時は、会員証や免許を提示しなければならない。
  • 必要な場合は常に、クライアントが医師や他からの適切な助言を求めているか、または助言を得ているかを確認しなければならない。
  • いつでも医療従事者と協力できるようにしておかなければならない。
  • 補完/代替療法に関係する法律を理解して遵守しなくてはならない。 (例:守秘義務、患者/記録へのアクセス防止、データ保護、治療に対する承諾、子供の保護、性感染症、法定伝染病、歯科、周産期、レメディ・ハーブ・薬剤・サプリメント・オイルの販売など)(注1)
  • M-P/M-MP自身またはM-P/M-MPが行う行為に関して、人々に誤解を与えかねない肩書きや説明を使ってはならない。
  • 資格を保持していないにも関わらず、またクライアントへの説明と特に同意取得がなされていないにも関わらず、他の治療やセラピーを行うようなことがあってはならない。
  • M-P/M-MPは資格を有していない限り、レメディ・ハーブ・サプリメント・オイルなどを処方してはならない。
  • 他の代替療法家、プラクティショナーまたは医療従事者を不当に批判、差別してはならない。
  • 他の代替療法家、プラクティショナーの患者、クライアントに対し、自分のクライアントになるよう説得する意図を持って接近してはならない。

3. メタ・ヘルスセッションの施行に関する事項

3-1 インフォームド・コンセント(告知に基づく同意)

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • 最初のクライアントの訪問時に、M-P/M-MPはメタ・ヘルスとは何であるか、どのような方法でセッションを行うか、どんな影響があると考えられるかを説明しなくてはならない。
  • 相談内容や料金に関してクライアントが求めていることに答えなくてはならない。
  • インフォームド・コンセントを行うのに充分な知的能力を備えていなければならない。
3-2 セッション中の行動

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • 礼儀正しく適切にふるまわねばならない。またクライアントの希望と一般常識を尊重して、クライアントに触れるか触れないか、どの部分に触れるかをはっきりさせておかなくてはならない。
  • クライアント自身の意見や見解、信念を尊重しなくてはならない。
  • 同意なく、クライアントの身体に手を当ててセッションをしてはならない。
  • クライアントに対して、必要がないにも関わらず衣類を脱ぐように指示してはならない。(眼鏡、コート、靴等を除く)
  • 性的・感情的・他のあらゆる方法によって、クライアントに嫌がらせを行ってはならない。
  • クライアントやその家族の弱みや悩みにつけ込むことがあってはならない。
  • クライアントまたはM-P/M-MPにとって安全・適切でない場合に施術を行ってはならない。
  • 性別・人種・宗教・政治的信念・性的嗜好・年齢・障害を理由として差別してはならない。
3-3 医療行為との関連

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • クライアントに医学的診断を与えてはならない。
  • クライアントが受ける治療(例:投薬・手術・精神療法)について助言、推薦を行ってはならない。またはクライアントが現在受けている医師の忠告や治療に干渉してはならない。
  • クライアントの治癒を保証、約束、断言、或いはほのめかす行為を行ってはならない。
  • クライアントやM-P/M-MPの同意がない状態で、第三者(例:トレーニング中のプラクティショナー、クライアントの家族)を同席させてはならない。
3-4 トレーニング中のプラクティショナーによるセッション

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • 基本的に、資格を有するM-P/M-MPの同席なしに、トレーニング中のプラクティショナーがセッションを行ってはならない。
  • ただし指導教官/指導者から特に公認され、クライアントがトレーニング中のプラクティショナーからセッションを受けることに同意している場合は、その限りではない。

4. M-P/M-MPへの助言

4-1 子供への施術
  • 基本的に、16歳未満の子供には成人の立会いのもとで施術を行う。(付記情報1)
4-2 妊婦への施術
  • 担当医師および助産師に対してメタ・ヘルスのセッションを受けることを報告するよう、クライアントに助言する。
  • クライアントから、M-P/M-MPがセッションを行うことについて署名つき承諾書を得ておくことが推奨される。(付記情報2)
4-3 同一施設で複数のM-P/M-MPが施術を行う場合
  • 同一施設で、力量の異なるM-P/M-MPがセッションを行う場合、以下の内容を明記した書面による通達を、クライアントに与えなくてはならない。
  • 日々のセッションを担当するM-P/M-MPの氏名と資格。
  • クライアントが受ける全てのセッションを監督する責任者。
  • クライアントのセッション記録に関する責任者。
  • 問題が発生した場合の担当者。
4-4 セッション施行場所
  • メタ・ヘルスセッションを行う場所の状態を適切に保ち、安全を確保する。地方自治体や地区の基準を満たす。
  • 医療機関(病院・ホスピスなど)で患者に接する場合には適切に行動する。(例:必要な許可を取る、医療機関が患者/クライアントのケアをする上で持つ責任を尊重する、身分証明書を持ち歩く、騒々しくないよう、施設職員や他の患者/入所者の妨害にならないように施術を行う、医療機関の職員と誤解されるような着衣を着ない)(注2)

5. クライアント記録と守秘義務

5-1 記録の保持および守秘義務

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • クライアントのセッション内容に関して明確に記録しなければならない。
  • クライアントの記録に虚偽の記載をしてはならない。
  • クライアントの記録は安全な場所に保管し、少なくとも5年間保存しなくてはならない。(注3)
  • 以下に示す例外を除き、クライアントから得た情報については秘匿しなくてはならない。
5-2 守秘義務の例外
5-2-1 守秘義務の例外事項

以下の場合、M-P/M-MPはクライアントに関する情報を開示することがあり得る。

  • 医師などの医療専門家に情報を開示することが、クライアントにとって利益になると考えられる場合。
  • 他の代替療法家/プラクティショナーに情報を開示することが、クライアントにとって利益になると考えられる場合。
  • 法令によって、情報開示が要求された場合。
  • 法的権限を持つ当局(警察、法廷など)に情報開示を求められた場合。
5-2-2 情報開示の際に求められる行為

情報開示に際して、M-P/M-MPは

  • 開示前にクライアントに、情報開示を通達しなければならない。
  • 可能な限り、開示される日時、場所、開示する相手、開示の理由、開示される情報の範囲、起こり得る結果を、クライアントに通達しなければならない。
  • 以上を書面で記録しなければならない。
5-3 M-P/M-MP同士におけるクライアント記録の保有と責任
  • 同じ施設で働き同じ業務についているM-P/M-MPは、クライアントの情報を誰が所有し、誰が責任を持つかについて、何らかの合意をしておくことが推奨される。
  • 法令による規則や何らかの合意がない場合、クライアントの情報は、セッションを行うM-P/M-MPまたはその組織が所有し、責任を有するものと理解されるべきである。
  • クライアントの記録を所有し、責任を有するM-P/M-MPは、4-3に述べる内容をクライアントに通達する義務を有する。
5-4 記録の廃棄
  • M-P/M-MPを廃業する、または施設を閉鎖する時、M-P/M-MPはクライアントの記録を可能な限り本人に返却するか、次項に述べる手段によって確実に破棄しなくてはならない。
  • 守秘義務を遵守した上での保管期間(少なくとも5年)が過ぎた後、クライアントの記録は、通常焼却または細断によって確実に廃棄されなくてはならない。
5-5 クライアントによる自身の記録へのアクセス
  • クライアントから文書での要求があった場合、M-P/M-MPは速やかに記録の写しを提供しなくてはならない。ただし、自分の記録に触れることがクライアントに悪影響を及ぼす可能性を医療専門家から指摘されている場合は、その限りではない。
  • クライアントが別の代替療法家/プラクティショナーや施設に移動する際に、記録の原本を求められた時には、クライアントから記録返却の保証を得ておくことが推奨される。

6. 教育および技能の習熟

  • M-P/M-MPは職務を通して、自らの知識と技術を最新のものにしておかなければならない。特に能力とパフォーマンスを高める学習活動に積極的に参加しなくてはならない。
  • M-P/M-MPは、法律の範囲内で、安全・効果的なセッションを行うための知識・技術・能力を備えていなければならない。自分の専門的能力の限界を知り、トレーニングを完全に終えて習熟している施術のみを行うことで、その責任を果たさなければならない。
  • もしクライアントの状態がM-P/M-MPの扱えるレベルを越えている場合は、補完/代替療法または従来医療の適切な専門家に、クライアントを引き継がなくてはならない。もし何らかの疑いのある時は、クライアントに医師の診察を受けるように話さなくてはならない。

7. M-P/M-MPの個人的な行為に関する事項

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • 業務に関係するかどうかに関わらず、自分達の職業が世間の信用を損なったり、悪評をもたらす行為をしてはならない。
  • アルコールまたは他の薬剤を乱用してはならない。乱用の結果、M-P/M-MPとしての能力に支障をきたした場合、適性の有無を問われかねない。
  • 精神的または身体的な健康障害により、クライアントに害を及ぼす可能性があると考えられる場合は、自らの業務を変えるかどうかの適切な助言を求めなくてはならない。

8. 広告と宣伝

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPおよびその業務に関する広告・宣伝は、

  • 一般的な法律 (特に医事法)の範囲内で行わなければならない。そして他の人々が法律に違反するのを助長してはならず、また法を犯すのを容認してはならない。
  • 良識と礼節の一般常識を踏まえ、他者に対する侮辱や攻撃、自らの職業上の信用を落とすような内容を含めてはならない。
  • どんな状態・病気であっても、治癒できると主張してはならない。
  • 人々の信用を悪用してはならない。また健康問題や施術に関する経験と知識の欠如につけ込むような表現をしてはならない。
  • 誤解を招く怖れのある表現、不正確な表現をしてはならない。
  • 資格のある医療専門家の助言が求められるような医学的状況について言及してはならない。
  • 広告、宣伝に接する相手に自己診断を勧め、資格のある人間からの医学的助言を閉め出すものであってはならない。
  • 顧客の声(クライアントの体験談)は利用可能であるが、これが真正であることの証拠を求められた時に応じられるものでなくてはならない。
  • 提供できるセッション内容やサービス、個人の資質や技術が、どんな形であれ、他のものより優れていると主張してはならない。
  • 他の代替療法家/プラクティショナーや医療専門家の行う施術、サービス、料金を批判してはならない。

9. 業務施設と管理

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは

  • セッションを行う施設に適用される衛生基準と安全性について、関連する全ての法律条項を承知し、遵守しなければならない。
  • セッションを行う施設を専門家として業務を行うにふさわしいものにしなければならず、整然として衛生的、かつ適切な照明・温度・換気のある状態に維持しなくてはならない。
  • 更衣室とセッション場所のプライバシーを可能な限り確保しなくてはならない。

10. 研究

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPが、臨床試験や他の研究に参加する場合は

  • 適切な倫理委員会が作成した規定に従って承認された研究手順を遵守しなければならない。
  • 研究に参加する患者/クライアントから、インフォームド・コンセントを得なくてはならない。
  • 規約で述べられている報酬以外に金銭を受け取ってはならない。
  • 報酬、贈答品によって影響されることなく研究を実施しなくてはならない。
  • 適切な記録を保存しなくてはならない。
  • 結果を誠実に記録しなくてはならない。
  • 代表者に対し、権限を越えた要求をしてはならない。
  • 研究に対する批判を行って、その公表を妨げようとしてはならない。

11. 苦情/クレーム

メタ・ヘルスに従事するM-P/M-MPは苦情/クレームがあり調査が必要な場合は、常に規定の手順に沿って行われることを理解しておかなければならない。

  • 自らの行動が行動規範および倫理規定に反していたのであれば、懲戒処分が科されることがあると理解しておかなければならない。
  • 苦情/クレームの調査に関して調査団体(注4)からの求めがあれば常に協力しなくてはならず、求められる手続きや時間に応じなくてはならない。
  • 苦情/クレーム処理の手順については、別資料を参照のこと。(現在作成中)
  • 他のM-P/M-MPへの苦情/クレームがあった場合、クライアントの安全を最優先にするため、速やかに管理団体(注5)に報告することが推奨される。

12. 注釈および添付資料

注1.:現時点で、代替療法に直接言及した法律は日本に存在しない。しかし医師法・薬事法など、関連すると思われる法案を理解して遵守することで、M-P/M-MPが質の高いサービスを提供することができ、社会の補完/代替療法に対する理解と信頼を高めることに繋がる。

注2:現在の日本では、医療機関などの施設において補完/代替療法を行うことは、法律上禁じられている。しかしいずれ幅広い療法を取り入れた統合医療が実現し、同一施設内で従来医療と補完/代替療法が可能になるとの展望により、本項目を残した。

注3:参考とした英国の機関では、推奨される記録の保管期限にばらつきがある。(6年~9年)本文書では、日本の医師法によるカルテの保管期間(5年)に準じた。

注4:英国ではGRCCT, CNHC, UK Healersなど、補完/代替療法を統括する機関が苦情/クレームの調査、調停、公聴会の開催を行う。日本においては現時点ではこのような役割を担う機関は存在しない。

注5:注4と同様

付記情報1:子供への施術

現在日本において、成人とは満18歳以上の人間をいい、18歳未満の未成年者は親または保護者責任を持つ者の保護・監督下にある。しかし未成年であっても16歳以上の就労者で個人の健康保険証を有していれば、自分の判断で医療機関を受診することが可能である。

この現状を鑑みて、未成年の子供であっても年齢が16歳を越えている時は、メタ・ヘルスセッションを受けることに対して自らの承諾を与えることができると考えるべきであろう。

ただ保護者責任は18歳到達時まで続くため、M-P/M-MPは施術に関して、子供自身と保護者責任を持つ人の両方から同意を得ることが最善だと思われる。もし親が18歳に満たない場合は注意が必要であり、疑わしい場合はセッションを行わないという選択肢を考慮すること。

子供の権利について、日本では欧米のように明確に規定されてはいないものの、16歳以上の子供は成人と同じように施術者に守秘義務を求めることができると考えておくべきである。また16歳未満の子供には、成人の立会いのもとでセッションを行うのが基本であるが、16歳未満の子供も、年齢・成熟度・理解度に応じて守秘義務を求めることができる。幼い子供の場合、守秘義務は親としての責任を持つ人間の同意と、子供の福祉・保護に関する法律および行政指導によって決まる。

保護責任を持つ人間が16歳未満の子供に適切な医療が与えられないようにした場合、子供の健康と福祉を無視しているとして、公的機関の介入を招くことになる。M-P/M-MPは医療従事者とは見做されないため、16歳未満の子供が病気である場合には、M-P/M-MPによるセッションの他に医師の診察を受けなくてはならない。もしM-P/M-MPが、医師の診察を受けていないことを承知の上で16歳未満の子供にセッションを行い、深刻な病気が見逃されて結果的に子供に害が及ぶことになれば、法的な責任を問われるリスクを冒すことになる。

保護責任を持つ人間が子供に対して医療を受けさせない場合は、M-P/M-MPは医師の診察を受けるよう相手に助言しなくてはならず、両親または後見人に以下の文章に署名させなければならない。

文章の例

承諾書

私は自分の子供(子供の氏名:山田 花子)に医師の診察を受けさせるよう、(M-P/M-MPの氏名:東京 太郎)から助言を受け承諾しました。

2017年5月1日 山田 一郎(両親または後見人自筆サイン)

2017年5月1日 大阪 良子(立会人自筆サイン)

この文章は施術記録と一緒に保管されることが求められる。

またM-P/M-MPはセッションの為に来た子供が害を受けているかその恐れがあると疑いを持った場合、児童虐待防止法に基づき、その子供の医師又は子供の居住地区の社会福祉課の担当に報告する必要がある。

付記情報2:妊婦への施術

妊婦・胎児に対するメタ・ヘルスの影響は必ずしも明確でない。そこで、全てのM-P/M-MPは、妊婦への施術を行う際には書面での承諾を求め、同意を得ることが推奨される。これはクライアントが胎児への影響を考慮した上でメタ・ヘルスセッションを希望していること、詳細については助産師と連絡を取るよう助言されたことを述べ、M-P/M-MPを免責するためである。

承諾書の例

承諾書

私(クライアント氏名:山田 花子)は、(M-P/M-MPの氏名:東京 太郎)から、メタ・ヘルスセッションを受けるという自らの決定を助産師に知らせるよう助言を受け承諾しました。

私は、メタ・ヘルスは医学的診断や予後に代わるものでないことを認識しています。

私は完全に自分の責任において、セッションを受けることを希望します。

クライアントとして、私はメタ・ヘルスのセッションを依頼し、受ける権利を行使します。

2017年5月1日 山田 花子(自筆サイン)

2017年5月1日 東京 太郎(自筆サイン)